教職員研修事業

今回は学校教育関係事業な中でも、教職員を対象にした教職員研修事業費です。令和元年度から開始された事業であり、教員の指導力向上を目的にしているとあります。
この事業の内容を見て疑問に思ったのは、尼崎市が現在行っている学びと育ち研究所運営事業費や、教育情報収集・提供事業費・調査研究・教材開発事業費との関係です。ここに挙げた3事業はいずれも教育の質を向上させる目的で開始された事業です。これらの事業と今回取り上げる教職員研修事業とのは本来密接な関係にあるべきと思いますが、事業評価からはそのような関係を伺うことはできませんでした。
後に記載するアンケート資料からは、尼崎市教育員会が掲げる教育問題に対する意識と、教育現場で指導に当たる教職員の問題意識に、大きな差があり、それらが改善されていく方向にはなってないのではないかという懸念を感じました。

研修者の人数や開催回数について言及はない
この事業の実施内容には、研修を実施した・講師の費用を負担した・派遣研修の旅費を負担した・育成を図るなどの文言は記載されていますが、肝心な研修対象者の人数や、具体的な研修会・講習会の開催回数などは書かれていません。

教職員の感想すらない
事業成果には、研修を受けた教職員の感想や、アンケート結果にすら言及されておらず、本当に教職員の指導力向上になったのか、まったく判断ができない状態です。
確かに、何をもって「指導力の向上」ととらえるのかは、難しい問題ですが、事業の目的に掲げた以上、その指導力も定義した上で、向上したという成果を示すべきではないでしょうか。
令和元年度から開始して、5年以上経過していることから、せめて事業開始前後での、教職員の意識調査を行うことぐらいはするべきではないでしょうか。
少し古い資料ですが、尼崎市の教育員会が、教育現場の体罰根絶に向けた有識者会議を実施しており、その中で教職員が教育委員会に伝えたいこととして、自由記載欄を設けており、その結果を集計したグラフがあります。
尼崎市教育委員会 令和2年6月 体罰根絶に向けた有識者会議 議論のまとめ
その中では、現場の教職員が求めるものの中で、1番多かったのは「教員増・勤務環境の改善・行事の見直し」とありました。このことからわかるのは、現場が求めているのは「研修」ではなく、根本的な学校現場の見直しなのではと思います。


講師の謝礼より、教職員の給与を上げたら
この事業の事業費を見ると、研修講師の謝礼や、視察用旅費に交じって、「尼崎城入場料」と記載されており、ただの慰安旅行ではないだろうかという疑念が芽生えてしまいました。
普段ご苦労されている教職員の方々への、慰安が目的であれば、別に構いませんが、この事業の目的はあくまで「指導力の向上」です。上述したような研修人数や講習会の開催数の記載もされず、ましてや現場の教職員が求めている、体制作りに効果がないとするならば、せめて研修会を開催する費用を削って、その分だけでも教職員の給与を増額したり、用務員の雇用に充てるべきではないでしょうか。
令和2年度のアンケート結果から感じられるような、尼崎市教育員会が掲げる問題意識と、教職員の問題意識に大きな差がある状態では、事業内容を続けていても、「指導力の向上」には、つながっていかないでしょう。
何よりも、問題なのが学びと育ち研究所運営事業費・教育情報収集・提供事業費・調査研究・教材開発事業費など、本来教職員を支える目的であるはずの、これら3つの事業についての連携が取れていると、伺える記載がないことです。何の為にこれらの事業を行っているのでしょうか。無意味な事業を廃止して、すぐにでも教職員の給与増額や、用務員・教員の新規雇用に充てるべきです。


