幼稚園教育振興事業費

今回は幼稚園に通う園児やその家庭を対象にした、幼稚園教育振興事業費についてです。平成22年度から開始されていますが、年々子供の出生数が減っているのに、”振興”とはこれ如何に。
尼崎市が平成24年度から掲げて、平成28年度から段階的に実施していた尼崎市立幼稚園教育振興プログラムやその後、令和6年2月に作られた尼崎市就学前教育ビジョンを見ても、この事業が成功したとは言えず、以前の取組に対する反省もなく、検証するデータすら持っていない現状がよくわかります。
その上で、この事業について見ていくと、結局のところ就学前の児童たちに対して、何を行うのか、どんな教育を行うのか、そして最終的な目的が何なのか、これらが全く明確にされていない状況が、問題だと思いました。

決まったことをやりました。
この事業の目的から見ていくと、以前取り上げた学校教育関係の事業ですら、目的には「学力の改善」、「向上を図る」、「振興を図る」などの文言がありました。しかしこの事業では、掲げる6つの柱を推進するもの、とあります。
決まったことをやります。が目的ということです。
この事業によって何をしたいのか、そのことすら記載されていません。

事業開始から15年、追跡データすらなし
この事業は平成22年度から開始されていますが、事業の目標指標には、何も記載されていません。
明らかに、この事業の目的自体が不明瞭であり、担当者ですら理解していないことがわかります。
事業開始から約15年経過していることから、事業開始時に4~5歳であった園児たちも、成人を迎える年齢になっているハズであり、すべてではなくても、一部の園児たちは尼崎市内にまだ、在住しているのではないでしょうか。その元園児たちやそのご家族に、アンケート調査すら行っていない。
そもそも追跡調査をして、効果の検証を実施する意思もない、もしくはそんな発想すら出てこない、これが「教育振興」の事業とは・・・・・

現状の把握から
冒頭には尼崎市就学前教育ビジョンで書かれていた、尼崎市の就学前教育についての課題を掲載しました。その中で「就学前教育の現状を踏まえた改訂を検討する必要があります」と報告されていました。
しかし、今の事業内容からは、現状の把握をまずしていかないといけない状態です。
もちろん、目的を明確にして、事業に携わる人たちが、その目的に見合った行動や施策に取組めるようにすることも必要です。
この事業費でも、専門相談員といわれる方々の派遣を行って、現場の問題解決につなげるよう努力されているのは理解できます。しかしその努力が、明確に目的に向かう方向に向いているのか、目的自体が効果的・合理的なものなのか、その検証をする為にも、現状の把握が必要ではないでしょいうか。
先ほども書いた、元園児たちやそのご家族に、アンケート調査を実施して、尼崎市の現場で生じている就学前教育や園児・家族の問題を明確にする。
その上で、現場の問題を洗い出し、改善する方向に施策を実施していくことが必要ではないでしょいうか。
現状のように、ただただ生じている問題に対して、対処療法的に予算を付けて、対応していくことは、結局現場の負担を増やし、税金を増やし、でも効果がない。そんな状況を続けていくことになると思います。


