学校支援専門家派遣事業費

今回は、学校内における、様々な問題について、専門家の派遣を行う事業についてです。
学校支援専門家派遣事業費は平成28年度から開始された事業で、学校に専門家(ここでは弁護士・医者)を派遣して、課題解決の手助けを行う事業とされています。
ここでも「学校という箱」にこだわる姿勢が見えており、決して子供たちの視点に立った内容にはなっていない印象を感じます。専門家の派遣が、効果がないとは言いませんが、「個に寄り添った教育の推進」と銘打った割には、あくまで学校に専門家を派遣していること、つまりは学校側からの要請で、派遣されている体制自体が、寄り添った教育といえるのか、疑問に思う事業内容です。

令和5年度は51回派遣
事業の実施内容には「令和5年度:年間51回派遣」と実績が謳われています。個人的にはそれの倍以上の問題が生じていたのではないかと勘ぐってしまいます。
職場の安全衛星管理を担当された方は、ハインリッヒの法則という言葉をご存じとは思います。
アメリカの損害保険会社の安全技師であったハインリッヒが発表した法則で「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件は重い災害(死亡や手足の切断等の大事故のみではない。)があったとすると、29回の軽傷(応急手当だけですむかすり傷)、傷害のない事故(傷害や物損の可能性があるもの)を300回起こしている。」というもの
この法則に、今回のような学校の問題が当てはまるのかわかりません。しかし、常識的な人間から見れば、51回の派遣事案が生じるということは、日常的にそれらの倍以上の事案が、学校内で起こっていると想像するでしょう。

改善とはだれにとってのものか
次にこの事業成果では、専門家派遣事案のうち、8割以上で改善したとあります。当然学校側から見ての「改善」であって、これらの事案で当事者となった子供やその親たちには、何も「改善」されていない可能性もあります。それらは当然ながらこの事業成果には記載されいませんが・・・
すべてが学校側だけに有利な「改善」であったとは思いませんが、教育の主役であるはずの、子供たちについて言及がないことと、尼崎市自身が作成している不登校生徒の出現率の推移からも、この事業が不登校生徒の減少には効果がないことがわかります。
ただこの事業自体は、不登校を含めた総合的は問題対策のための事業であり、単純に不登校生徒への効果のみをみて、不要と判断はできません。しかしながら、ここでいう「改善」があくまでも学校側の立場を考慮したものであることは、想像できるでしょう。

専門家への報酬より、職員の人権が多い
最後にこの事業の事業費です。ここでは派遣された専門家の報償費が記載されていますが、令和3年度から見ても、報償費より職員の人件費の方が高い状態です。これは速やかに専門家を派遣して、課題に対処するよりも、先に学校側で課題に対処して、その結果手に負えないから、専門家を呼んだでいる場合が多いことが考察できます。
子供たちやその親たちが、学校関係を飛び越えて直接専門家に相談する制度や体制を作らなければ、「学校という箱」にこだわる職員では、問題を矮小化する可能性が高いでしょう。
結局いじめ問題など、学校の問題が大きく取り上げれられた場合、世間一般的には、やれ第三者委員会を設置して~となるわけですから、下手に学校側で対処させずに、直接第三者(この場専門家)を参加させるべきです。
この事業費の内容からも、やはり「学校という箱」にこだわる姿勢が見えており、決して子供たちの視点に立った事業の内容にはなっていない印象を感じます。


